ACSM 健康にかかわる体力の測定と評価 ―その有意義な活用を目ざして―

book0029

ACSM 健康にかかわる体力の測定と評価 ―その有意義な活用を目ざして―

(book0029)

原書名:ACSM’s Health-Related Physical Fitness Assessment Mamual; American College of Sports Medicine

編者

アメリカスポーツ医学会

Editors

Gregory B. Dwyer, PhD, FACSM
Department of Movement Studies and Exercise Science
East Stroudsburg University of Pennsylvania
East Stroudsburg, Pennsylvania
Shala E. Davis, PhD, FACSM
Department of Movement Studies and Exercise Science
East Stroudsburg University of Pennsylvania
East Stroudsburg, Pennsylvania

監訳

青木 純一郎 (順天堂大学 名誉教授)
内藤 久士 (順天堂大学スポーツ健康科学部 准教授)

訳者

小林 裕幸 (筑波大学付属病院水戸地域医療教育センター 准教授)
村岡 功 (早稲田大学スポーツ科学学術院 教授)
髙橋 淳一郎 (中京女子大学健康科学部 准教授)
綾部 誠也 (福岡大学スポーツ健康科学部 助教)
神野 宏司 (東洋大学ライフデザイン学部 教授)
小倉 裕司 (聖マリアンナ医科大学医学部 助教)

書籍データ

【発行日】 2010年1月5刊行
【判型】 B5
【ページ数】  184
【写真図表】 図33 表67

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序文

本書(ACSM’s Health-Related Physical Fitness Assessment Manual:アメリカスポーツ医学会ACSM 健康にかかわる体力の測定と評価)の目標は、健康にかかわる体力の評価に必要なスキルを培うための理論と、標準的で段階的な評価手順のためのガイドラインを読者に提供することである。
各章では、健康にかかわる体力の各要素についての序説とその評価のためのテストについて書かれている。それぞれの評価テストの紹介では、結果を解釈するための評価基準のガイドラインや標準値についてはもちろんのこと、当該要素のデータを収集するために標準化されたガイドラインについても言及している。
本マニュアルのユニークな特徴は、読者がデータを収集するのに必要なスキルを容易に学べるように、そしてそれらのスキルを熟練するまで練習できるように、各評価のための説明や手順がステップ・バイ・ステップの形式で示されていることである。さらに、読者がより上達していくための機会を得られるように、いくつかの評価テストを用いて行う練習課題が示されている。本マニュアルはたくさんの図(例えば皮下脂肪厚を測定するための正しい解剖学的位置)、各テストの順序だった説明を含む表、全テストデータを統合して図解したケーススタディ、そして読者に更なる情報を与えるための参考文献などを含んでいる。
本書「健康にかかわる体力の測定と評価」は、体力の評価に関わる無数の情報源(体力の教科書、製品の情報、測定についての論文や教科書など)を置き換え一つの情報源として示すことによって、この研究分野を体系的に統一するものである。本マニュアルはACSMの「運動処方の指針」の最新版にほぼ従っている。マニュアル全体に渡ってACSMの「運動処方の指針」を参照しているので、読者は「運動処方の指針」を案内書として手にする必要があるであろう。また、このマニュアルは、健康にかかわる体力の評価について、ACSMが認定する健康・体力インストラクター資格に沿って書かれている。
本稿は、体力の健康にかかわる5つすべての要素(1)呼吸循環器応答、(2)身体組成、(3)筋力、(4)筋持久力および(5)柔軟性の評価を扱っている。その特色は、

  • 本マニュアルに示されたその主要領域は、他のいかなる文献よりも全領域に渡って詳しく述べられている。
  • 読者が対象者の体力評価をするのに役立てられるように、評価テストが料理のレシピ形式で示されている。
  • 健康にかかわる体力評価の領域では、各章ともACSMの認定する健康・体力インストラクター資格に必要な知識、技能、能力(KSAs)に沿っている。
  • 事前の活動量スクリーニングとACSMのリスク層別化および体力の定義が示されている。
  • 50以上もの体力評価テストが、結果の解釈を補助する基準値データとともに、ステップ・バイ・ステップの形式で示されている。
  • 更なる学習の機会を提供するための練習問題、ケーススタディ、実習が掲載されている。

われわれだれもが、「体力を保つ」ことはより健康でより長生きするための鍵であるという英知の意味を認めるようになった。このマニュアルがその目標に貢献できるならば、この本を書いたわれわれの目的は十分に満たされることになるであろう。

謝辞

われわれは、本書を作成するのにあたり快く時間と専門技術を与えてくれたすべての人:ACSMの査読者―特にLenny Kaminsky, Mark Kasper, Jeff Roitman,そしてMitch Whaley;ペンシルバニアの東ストラウズバーグ大学とその周辺の同僚と学生;そしてLippincott Williams & Wilkinsの編集、マーケティング、制作チーム―特にPete Darcy, Linda Napora, Christen DeMarco,そしてJenn Weir Glazerに感謝する。
とくに、われわれの配偶者と子どもたちの愛情と激励に感謝する―Beth Dwyer、息子たちKevin, Eric Dwyer,そしてJohn Kochmanskyと息子Jake Kochmansky。そばには常に沢山の人たちがいてくれて、われわれはとても幸せである。

GB.D. and S.E.D.

監訳者まえがき

疲労(fatigue)あるいは体力(physical fitness)は、体力学分野における重要な学問用語であるが、いわゆる巷でも、疲れた、とか体力があるとかいった具合に、誰もが何の躊躇もなく日常会話で広く用いられている。しかし、例えば、疲労を解明すれば、確実にノーベル賞の受賞対象になるといわれている。現に、1922年のノーベル医学生理学賞はイギリスの生理学者ヒルとドイツの生化学者メイヤーホフの「筋における乳酸生成と酸素消費について」の研究で、疲労を乳酸で説明するものであった。もっとも、その後(1929)デンマークの生理学者ルンズゴールが、メイヤーホフの面前で、無酸素下でも条件によっては筋が収縮を持続することが可能であることを実証して、このいわゆる疲労の乳酸説は崩壊してしまった。それ以来、疲労は体力学における未知の星として燦然と輝いているのである。
体力も同様で、極言すれば、定義だけは研究者の数だけ存在する。したがって、体力とは有るものなのか無いものなのか、低いものなのか高いものなのかも判然としないまま、体力を構成すると考えられるいくつかの要素の測定をして、それを例えば、その被験者が含まれる集団あるいは他の別の集団の平均値と比較して、数量的にあるいは「低い」とか「優れている」とかいう記述式に、5段階程度に分類され、それが評価点とされている。握力の測定値から筋力が、皮下脂肪の厚さから体脂肪量が推測される。そこには、バッテリーを組んだ各体力測定項目の定義や測定方法、比較の対象となる標準値等に、統計学的に多くの測定誤差が付きまとい、把握された体力の信憑性を危うくしている。
一方、日常生活における利便性が増すにつれて身体活動の必要性が減少し、運動不足が誘因となる運動不足症、成人病、あるいはメタボリックシンドロームが、特に先進国において大きな社会問題となっている。そして、「健康と体力、および運動」に、多くの人びとの関心が高まっている。当然のことながら、同時に体力測定に関する興味も高まり、測定を受けて自らの健康について客観的に理解しようとする欲求が高まっている。
体力はスポーツや労働などによって積極的に外界に働きかける能力である行動体力(走・跳・投力など)と病気からからだを守る防衛体力(免疫、体温調節、精神的ストレスに対する耐性など)とに大別される。しかし、防衛体力については全ての項目について、測定方法が確立されていない。測定できるのは行動体力の構成要素だけである。
そこで、行動体力の個々の構成要素について、運動不足になるとその能力が低下して、ある水準まで低下すると疾病の引き金になるかという視点で整理してみると、図に示したように、8項目全てが運動能力(motor physical fitness)として、また心肺持久力、筋力/筋持久力、柔軟性および身体組成の4項目が運動能力であると同時に、健康にかかわる体力(health-related physical fitness)として捉えることができる。
本書は、アメリカスポーツ医学会がこの健康にかかわる体力の定義、測定方法、評価、活用等についてまとめたものである。体力測定は人間を対象とした研究の出発点となる重要な手続きでありながら、測定のための測定に流されがちでもある。本書が健康という観点から体力測定を考える契機となることを願って、監訳者の前書きとしたい。

青木 純一郎 ・ 内藤 久士

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