運動学習の脳・神経科学 ―その基礎から臨床まで―

book0060

運動学習の脳・神経科学 -その基礎から臨床まで-

(book0060)

ヒトの動きの神経科学シリーズ Ⅳ

編著者

大築 立志 東京大学 名誉教授
鈴木 三央 六地蔵総合病院 リハビリテーション科 教育顧問
柳原  大 東京大学大学院総合文化研究科 教授

著者

井上  健 公立置賜総合病院作業療法士 副技師長
遠藤 昌吾 東京都健康長寿医療センター研究所 老化脳神経科学研究センター研究部長
小川 哲也 東京大学大学院総合文化研究科 助教 身体運動科学研究室
小野 誠司 筑波大学 体育系 准教授
加藤  明 東海大学 医学部基礎医学系生体構造機能学 准教授
金子 断行 (株)目黒総合リハビリサービス 理学療法士
進矢 正宏 広島大学大学院総合科学研究科 准教授
田中 宏和 北陸先端科学技術大学院大学情報科学研究科 准教授
野崎 大地 東京大学大学院教育学研究科 教授
橋谷裕太郎 上加茂神経リハビリテーション教育研究センター
林  拓志 日本学術振興会特別研究員、ハーバード大学工学・応用科学部
山浦  洋 電気通信大学大学院情報理工学研究科 特任研究員
(五十音順)

書籍データ

【発行日】 2020年4月
【ページ数】 216
【図・写真】 132

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序文

私たちの生活を構成する様々な体の動きは、脳内で情報処理され、創り出された種々のニューロンの活動が、最終的に、主として脊髄の運動ニューロンの活動、そして、骨格筋の収縮による運動や行動となって外界に表出されたものである。心の動きである情動や精神活動もまた、しばしば、副交感神経支配の瞳孔括約筋と交感神経支配の瞳孔散大筋の収縮とのバランスによる瞳孔の大きさ変化や、固視微動などの眼球運動、さらには、姿勢変化や表情変化、手足の動きなどの体の動きによって外界に表出される。
我々が日常生活においてもっとも普通に行っている運動である随意運動は、自分の意志によりその運動の発現と停止を行うことができること、その運動の目的と結果を意識することができることを特徴としているが、これらは長い間の経験や練習によって意識的にあるいは無意識的に変化し、よりよく内部及び外部環境に適応した結果として生成された運動であり、新しい動作を獲得し保持すること、すなわち、動作の学習・記憶に関わるmacrocircuits及びシナプスレベルのmicrocircuitsをその基盤としている。
また、脳や様々な運動器に不具合や機能的障害が生じた際に、適切なリハビリテーションを根気よく繰り返すことによって運動機能を回復・再建できることも明らかにってきているが、ここにも学習・記憶に関わるmacrocircuits及びシナプスレベルのmicrocircuitsがその基盤となっていると考えられる。
本書では、上肢による目標到達運動、下肢や体幹による姿勢や歩行運動のみならず、眼球運動についても取り上げている。その理由としては、多数の関節によって連結され、ある意味では冗長な筋・骨格系の力学系とは全く異なる眼球という臓器を適切に動かして視覚情報を得るための眼球運動制御系においても、少なくともシナプスレベルのmicrocircuitsにおいては、上肢及び下肢の運動学習とほぼ共通の原理がその神経基盤となっているからである。
本書は、Ⅰ:姿勢、Ⅱ:歩行と走行、Ⅲ:筋力に続き、Ⅳ:運動学習に関わる脳・神経科学について、microcircuits、すなわちシナプスレベルから、macrocircuits、すなわち神経回路レベル、さらに、実際の運動、数理モデルによる計算論的神経科学、そして、リハビリテーションにおける実践例まで幅広くかつ最新のトピックスを含めてまとめてある。しかしながら、実験的研究及びその結果としての証明は未だ十分ではないことも事実であり、読者の方には、論証のレベルを相関関係のみならず因果関係として立証していくために個々の研究のさらなる進展が必要なことを御理解頂ければ幸いである。末筆ながら、本書に執筆頂きました方々に厚く感謝を申し上げるとともに、今後の研究の進展を編者一同心より祈念する次第である。

2020.1.20.
編者代表 柳原 大

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