スポーツ現場に生かす運動生理・生化学

book0036

スポーツ現場に生かす運動生理・生化学

(book0036)

編著

樋口 満 (早稲田大学)

執筆者

甲田 道子(中部大学)
高田 和子(国立健康・栄養研究所)
坂本 静男(早稲田大学)
定本 朋子(日本女子体育大学)
町田 修一(東海大学)
伊藤 静夫(日本体育協会)
内田  直(早稲田大学)
鈴木 克彦(早稲田大学)
中谷  昭(奈良教育大学)
川中健太郎(新潟医療福祉大学)
八田 秀雄(東京大学)
岡村 浩嗣(大阪体育大学)
亀井 明子(国立スポーツ科学センター)
石見 佳子(国立健康・栄養研究所)
木村 典代(高崎健康福祉大学)

書籍データ

【発行日】 2011年2月7日刊行

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はじめに

運動生理・生化学の研究成果のスポーツ現場への応用

南アフリカで開催されたサッカー・ワールドカップが終わって、すでに一ヵ月が過ぎようとしている。今回のワールドカップ開催前には、日本チームに対する国内の評価はいま一つであったが、緒戦にカメルーンに勝利し、オランダに善戦、そしてデンマークに快勝し、決勝トーナメント進出という結果を残した日本チームは、まるで優勝でもしたかのような大歓迎を受けながらの帰国であった。
私は、日本チームの予選リーグ最終戦であった対デンマーク戦をヨーロッパスポーツ科学会議(ECSS)が開催されていたトルコの地中海に面したリゾートホテルのラウンジで、研究発表にやってきた研究室の大学院生たちとテレビ観戦した。本田選手や遠藤選手の見事なフリーキックによる得点シーンでは、飛び上がって喜んだが、トルコのホテル従業員も一緒に喜んでくれたことが忘れられない。トルコといえば親日的な国として知られており、今回の南アフリカ大会には出場していないが、2002年日韓共同開催のワールドカップ決勝トーナメントで日本が敗れた国でもある。
ワールドカップ本大会に出場してきた各国チームは、本大会に出場するために、あらゆる手立てを尽くしてきたであろうし、本大会を勝ち抜くためにも最善の努力をしてきたであろうことは、想像に難くない。ワールドカップやオリンピックなど大きな国際大会終了後には、勝利のために活躍した選手や監督にスポットが当てられるのはいつものことであるが、選手やチームの活躍の陰には、スポーツ科学をベースとしたしっかりとしたサポートシステムが構築され、機能していたことは忘れられがちである。
ECSSでは、クオリティの高い研究発表がデンマークの研究者から数多くなされており、日本からも若手を中心としていくつかのクオリティの高い研究が発表されていた。デンマークをはじめ北欧諸国はスポーツ科学の先進国であるが、サッカーで日本がデンマークに勝ったからといって、日本のスポーツ科学がデンマークより優れていると思う人はいないだろう。しかし、日本サッカー協会がスポーツ科学のこれまでに蓄積されてきた研究成果を取り入れ、スポーツ現場に生かしてきた成果であることは間違いないと思われる。そして、運動生理・生化学を含むスポーツ科学研究の理論をしっかりと身につけ、選手やチームをサポートするスタッフとして、アスレティックトレーナー、スポーツ栄養士、そしてスポーツドクターなど様々なエキスパートが影となって支え、貢献してきたに違いない。
わが国では日本体育協会が公認スポーツ指導者養成制度により、様々なスポーツ関連のエキスパートを養成してきている。そのなかに、最近、スポーツ栄養士が新たなエキスパートとして加わったことは特筆されるべきことである。
本書はスポーツ選手を支える様々な分野のエキスパートを目指す人々にとって、スポーツ科学のなかに重要な位置を占める専門分野である運動生理学、運動生化学のこれまでにコンセンサスが得られている知見に、最新の研究成果を加えて、とくに“スポーツ現場に生かす”という視点から執筆されている。本書の執筆陣はそれぞれの分野で高い専門的知識を持っているばかりでなく、実践的な視点からもスポーツ科学にアプローチしているエキスパートである。執筆者それぞれの書きぶりには多少のばらつきがあるが、それは各執筆者の持ち味が出た結果であると理解していただきたい。今後、読者の方々に忌憚のないご意見を頂き、よりよいものにしていきたいと編者は考えている。

2010.8.
早稲田大学教授
樋口 満

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