体育・スポーツ史概論<改訂4版>

book0074

体育・スポーツ史概論<改訂4版>

(book0074)

体育・スポーツ・健康科学テキストブックシリーズ

正誤表

著者に大変申し訳ないことをいたしました。以下に正誤表を提示しお詫びいたします。
4頁下から17行目 誤(4)ユテナーリス→正 ユヴェナリス
17頁 ミニレポート課題 1. の1行目  誤 ユテナーリス→正 ユヴェナリス
139頁下より15行目  誤 1)ユテナーリス→正 ユヴェナリス
139頁下から7行目  誤 ユテナーリス→正 ユヴェナリス
201頁 索引右端下から5行目 誤 ユテナーリス→正 ユヴェナリス

編著者

木村 吉次 中京大学名誉教授・中京大学スポーツミュージアム名誉館長
田原 淳子 国士舘大学学長・国士舘大学体育学部教授
來田 享子 中京大学体育学部教授・中京大学スポーツミュージアム館長

著者

岩佐 直樹 朝日大学保健医療学部講師
大熊 廣明 筑波大学名誉教授
片渕美穂子 本和歌山大学教育学部准教授
康  冬玲 中日文化センター講師
真田  久 環太平洋大学大学院教授・筑波大学特令教授
杉元 政繁 大阪体育大学名誉教授
中房 敏朗 大阪体育大学スポーツ科学部教授・学長補佐
藤坂由美子 東京女子体育大学准教授
山田 理恵 鹿屋体育大学体育学部教授
渡辺  融 東京大学名誉教授
(五十音順)

書籍データ

【発行日】2025年3月15日

【ページ数】202

【版型】B5

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改訂4版のことば

本書の初版は、2001年9月11日の世界同時テロのあとに出版されている。そして、最初の改訂は、アフガニスタン空爆がイラク戦争に拡大した後だった。三訂もウクライナの政府軍と親ロシアが戦う東部紛争が続き、また「イスラム国」がシリア・イラク両国に支配地域を拡大しているときであった。そして、四訂版を出そうと言う今は、いまだウクライナ戦争が収まらないなか、パレスチナ・ガザ地区からのロケット弾襲撃に対するイスラエル側の報復として激しい空爆を続けているときである。こうして振り返って見ると
世界にはいつも紛争が続いていて、多くの人の命を奪い、人びとを苦しめていることが生々しい新聞の報道写真やテレビの動画から見て取れる。私たちは国連安全保障理事会での話し合いや総会での決議に期待するが、拒否権を持つ常任理事国などの振る舞いによって冷や水を浴びせられ、期待が裏切られる。平和を願う多くの人びとの期待に応えてほしい。
なぜウクライナ戦争が起こったのか、どうしてパレステナ自治区のガザ地区とイスラエルの紛争が続くのか、このような課題でしたら従来の高校の世界史ではほとんどあつかわれずじまいだったといってよいでしょう。しかし、令和4(2022)年4月からの新学習指導要領の実施に伴って「歴史総合」が設けられ、まず近代以降の世界と日本の歴史を広く相互的な視点から学ぶことになりました。それも、この学習では多くの資料を収集したり、資料を解釈ししたりして、そこから意味をくみとったり、まとめたりする能力を育成することになりました。従来ややもすると学校の歴史科目は歴史的事象を丸暗記する学科のように思われていましたが、これが歴史を面白い科目ではなくしていたのです。しかし、本当は、歴史は面白い科目で、なぜこうした事象が起こったのか、他にどのような影響を与えたのかといったことに自分の思考力を働かせたり、また他の人と意見を交換したりして、歴史的な課題を把握し、課題の解決に向かおうとする力を養い、持続的な社会作りを考えて、歴史の総合的な理解をもとに、世界や日本のありようを考察するような態度を育成することをねらったものなのです。
こうして、いま歴史教育は大きな転換を遂げようとしているのでが、その理念や方法は大学の特殊な各専門分野の歴史関係の教育にも当然影響が及び得ない状況です。編者らはこれを痛感し、現在の改訂三判は、出来るだけ資料を多くとりいれていて、またレポートの課題も豊富に用意してあり、歴史総合の理念に近い内容であったが、しかしまだ不十分な状態にあると考え、少しでも改善できればということで今回改訂を決意した次第です。まだまだ改善すべき点が多いと承知していますが、ご覧頂いて貴重なご意見をお寄せ下れば幸いです。
ウクライナやパレスチナ・ガザ地区の戦火の止むことを願って
2024.12.

編者代表 木村 吉次

Ⅰ部 体育・スポーツの近現代

・学びの概要

本書では最初に近現代の体育・スポーツの歴史について学びます。
先ずは西欧の近代国家においてすぐれた体育家たちが現れ、その活躍によって独自の体育システムが創出されたこと、そしてそれが国内だけでなく外国にも普及し、個人はもとより学校や軍隊でも受け入れられて行った事実に注目する。その影響は遠く日本の明治維新後の学校体育の創始にも及んだのである。
国民国家である近代国家は「国民」の造出が課題であったため、国民の健康の増進や国民軍兵士の体力増強のために身体鍛錬が必要となった。各国においてさまざまな体育のシステムが存在するようになると、体育システムの統一が企てられるようになり、学校に対しては体育指導の指針として「教授要目」(シラバス)[第二次大戦後の日本では「学習指導要領」]が作られ、軍隊については「体操教範」等が制定され、それらが時代の進展とともに改訂されてきたのである。
スポーツに目を転ずると、いち早く市民革命を成し遂げ、産業革命に突き進んだイギリスにおいて近代スポーツが誕生したことが見られる。レイモン・トマは、支配階級であった貴族が庶民のゲーム・スポーツに興味を向け規則化するようになった新しい現象が起こったことを指摘している(クセジュ文庫)。18世紀半ばからいち早く競馬、ゴルフ、クリケットなどのスポーツ・クラブが設立されるが、19世紀に入ると登山、フットボール、陸上競技、水泳、ラグビーなど続々と他のスポーツでもクラブが設立されていく。パブリック・スクールのスポーツもルールの統一が進み、対校競技の活発化などを通じてスポーツの近代化に大きな役割を果たした。
工業化社会における近代スポーツは、競技の勝敗に価値を置き、成績の数量化や厳密な計測と記録などを行った。国内のスポーツ・クラブの上に協会や連盟が組織され、交通手段の発達とあいまって統一ルールの下での競技会が盛んになり、次いで国際的な競技連盟や協会などの組織が作られ、国際競技会に発展した。ついには近代オリンピックを主催するIOC(国際オリンピック委員会)の誕生をみるに至った。それが130年余を経た今日、巨大なオリンピックを運営し統制する機関となって存在しているのである。

編者代表 木村 吉次

Ⅱ部 体育・スポーツ文化の歴史と遺産

・伝統と遺産に学ぶ

本書のⅠ部では、「体育・スポーツの近現代」として、近代社会における体育の発達及び近代スポーツの形成と展開を跡づけて、それらの今日の発展に至るまでを見てきた。なぜ原始時代、古代、中世、近世、近代、現代と通常の時代区分に従った叙述の方法を採らずに、いきなり近現代から始めたのかというと、今日の体育・スポーツにつながる歴史的事象が多く、またそれらに関連した史料や遺品・遺物にも触れやすく、多くの人々が興味や関心を持ち、それぞれ歴史的探求に入っていきやすいと考えたからである。例えば、2024パリ・オリンピック、パリ・パラリンピックが閉幕したばかりであるが、それぞれの大会において何が課題として残されたのか、両大会のレガシーは何かが問われる。新聞、雑誌等の多くのメディアが種々様々な意見を掲載している。それらを参考にしながら自分でも思考し、自分の見解をまとめてみることが重要である。このような現代スポーツへの関心を育てることが将来のスポーツの発展には欠かせないのである。近現代の体育・スポーツについての理解を深めるために文書や画像などの資料にも触れ、その読み取りや解釈を行うことの訓練もでき、そうした歴史探究の方法を身につけてから、原始時代から近世までの体育・スポーツの歴史を学ぶならば、一層自分の興味や関心をもって積極的に取り組むことができるようになると考えられる。
このⅡ部で扱われるスポーツは、近代スポーツとは異なって、民族・民俗や宗教や軍事訓練システムなどそれぞれの地方・地域の固有の文化と強い結びつきがあり、また類似したような身体文化でもその技法やルールが違っていることが少なくない。さまざまな遊戯、宗教的行事、生活行事などにスポーツ的な身体文化が伴っていることが多い。文献資料のほか絵画・彫刻や建築物など様々な文化財や遺品・遺物にそれらのものが描かれ、遺されている。そうしたものに出来るだけ注意を向け、歴史的な体育・スポーツの理解を深めることが学習に役立つ。直接現地で見学することは難しいけれども、博物館や美術館など観覧できる企画があれば訪ねてみたい。さらに、手近なところでは、さまざまな歴史図録や美術全集などを利用したい。
Ⅱ部で扱う原始時代から近世まで体育・スポーツは、生成・発展・継承・移入・伝播によって発展してきた歴史があったからこそ近代の体育・スポーツの形成・発達ができたのである。上述の歴史探求の方法を使いながらその展開の内容について学ぶことにしたい。

編者代表 木村 吉次
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