視覚障がい者の身体運動科学 ―学際的研究―

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視覚障がい者の身体運動科学 ―学際的研究―

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本書は、視覚障がい者の運動関連分野の研究をバイオメカニクスと運動学習から体育とパラリンピックスポーツまで詳細にレビューした世界初の専門書である。
各章は、重要な専門分野あるいは専門領域の最新の研究動向と今後の研究の方向性、それに実践的意義に分かれ、実証研究のエビデンスを引用して学際研究の向かうべき新たな道を呈示している。本書は、視覚障がいと運動を論じた他のどの専門書よりもさらに深く踏み込み、子どもから青少年、高齢者までの生涯にわたる身体活動をカバーするとともに盲ろうの重要な領域もレビューしている。
本書は、スポーツとエクササイズ、それに障害の分野で研究する専門課程の学生と研究者に必須であり、現職教員とキャンプ指導者、理学療法士、身体活動プロモーション専門家をはじめ実践家とサービス・プロバイダーに非常に有用な専門書である。

編著者

Justine A. Haegele
米国のオールド・ドミニオン大学ヒューマン・ムーブメント・サイエンス学部准教授。専門はアダプテッド身体活動の学際的分野である。第一の関心は障害者とくに視覚障がい者の学校体育をはじめ身体活動の参加経験にある。ヘーゲル博士はResearch Council of SHAPEのリサーチ・フェローとAdapted Physical Activity QuarterlyそれにQuestの副編集委員を務めている。

執筆者

Liv Berit Augestad
ノルウェー、ノルウェー科学技術大学(NTNU)、神経医学とヒューマン・ムーブメント・
サイエンス学科、医学・健康科学学部教授。ノルウェーのヘイムダル、スタッペド・
ミット視覚障害局の非常勤講師でもある。主な研究領域は身体活動、健康および視覚障
害者の心身の健康である。

Ingvild Vatten Alsnes
ノルウェー、スタヴァンガー大学健康科学学部公衆衛生学科准教授。ノルウェー、サンデス市の一般開業医でもある。主な研究領域は妊娠中の高血圧に関する疫学的研究と心血管疾患の予後リスク。とくに関心があるのは身体活動とスポーツ医学である。

Hunter J. Bennet
米国、オールド・ドミニオン大学人間運動科学学科バイオメカニクス助教授。ハンターのバイオメカニックス研究の領域は、視覚障害者および自閉症スペクトラム症のある人の移動(歩行と走行)のアセスメント、 歩行介入の効果、筋力トレーニング運動に関するテクニックである。最近、ハンターと彼の研究チームは学際的研究分野のジェフレス・トラスト賞を受賞し、研究助成金を授与された。

Ali Brian
米国、サウスカロライナ大学体育学科アダプテッド体育/アダプテッド身体活動プログラムおよび身体・発達障害研究実験室准教授・室長。現在、視覚障害者の運動研究施設の研究施設長であり、障害のある人の全国体育コンソーシアムおよび国際運動発達研究コンソーシアムの理事であり、また、SHAPE Americaの研究協議会委員長でもある。

Amy E. Burton
英国、スタッフォードシャー大学上級講師、健康・ケア専門職認定健康心理学士、英国心理学会会員。バートン博士は視覚障害高齢者の身体活動の研究をはじめ感覚障害高齢者の健康に関する研究を行っている。

Luis Columna
米国、ウイスコンシン・マジソン大学キネシオロジー学科准教授。障害のある子どもの家族(とくにヒスパニック系の家族)が身体活動に参加する機会を高める方法、および教師が多様性のある人たちを指導するための方法について研究。Columna博士はFit Familyプログラムを開発した。このプログラムは障害のある子どもとその親、大学生、アダプテッド体育分野の実習生、特別支援教育、視覚に障害のある人の歩行、心理学、運動科学などがひとつになった身体運動活動である。国内のいくつかの雑誌、例えばDisability and Health Journal, Palaestra, Questの編集委員を務めている。

Robert Wall Emerson
米国、ウエスタン・ミシガン大学の盲・ロービジョン研究学科教授。視覚障害のある児童生徒の訪問教師であり、歩行の専門家である。また、研究者、教育者でもある。さらに、25年以上にわたって視覚障害者に関する研究を行っている。

Pamela Haibach-Beach
米国、ニューヨーク州立大学ブロックポート大学運動行動学教授。ホーナーズ大学の副ディレクターであり、夏期学部生研究プログラムのディレクターと視覚障害者の運動研究施設の共同ディレクターも務めている。盲ろうの人の運動発達とバランスを研究している。最近までアメリカ・キネシオロジー学会の委員を務めた。現在、ブロックポート・ライオンズ・クラブの会員である。

Heather Katz
米国、ウイスコンシン・マジソン大学博士課程学生。障害のある人のダンスとグループ・フィットネスを研究している。博士課程で研究を始める前、テキサス州のデントン・インディペンデント学校区のアダプテッド体育専門家であった。現在、Luis Columna博士のFit Families Programの共同研究者を務め、自閉症のある子どもとその家族に身体活動の介入研究を実施している。

T. N. Kirk
米国、ジョージア大学キネシオロジー学科助教授。身体活動、エクササイズ、およびスポーツの文脈で視覚障害者のモチベーション信念と生きられた経験を研究することに関心がある。現在、視覚障害成人の身体活動参加の客観的測定、モチベーション信念、健康関連QOLを研究している。ニコルは柔道や格闘技のインストラクターを務め、視覚障害のある青少年の柔道指導を行っている。

Luis Laranjo
ポルトガル、科学・技術財団の博士研究員。研究テーマは視覚障害成人の身体活動推進方略である。

Laura J. Lieberman
米国、ニューヨーク州立大学ブロックポート大学キネシオロジー学部アダプテッド体育特別教授。視覚障害者運動科学研究所(IMSVI)副所長。視覚障害児の教育スポーツキャンプであるキャンプ・アビリティーズの創設者であり所長。キャンプ・アビリティーズは20州8ヶ国にある。ごく最近、キャンプ・アビリティーズを世界中に推進した功績によりグローバル・フルブライト・スカラーシップを授与された。

Jessica Macbeth
英国、セントラル・ランカシャー大学スポーツ・健康科学学部上級講師・研究指導教員である。スポーツにおける障害とジェンダーに関する平等と公正の問題を広範囲に扱い、とくに視覚障害者を中心に研究をしている。最新の研究は、弱視サッカー選手の体験と弱視者のクラス分けである。

José Marmeleira
ポルトガル、エボラ大学スポーツ健康学科助教授。マルメレイラ博士の主な研究は、アダプテッド身体活動と高齢者の運動プログラム、さらにこれらの実践研究である。ポルトガルの人間発達・健康科学・スポーツ科学研究センター(CIDESD)および総合健康研究センター(CHRC)の会員である。

Benazir Meera
米国、ウイスコンシン-マディスン大学キネシオロジー学科博士課程院生。Meeraは現在、同大学において健康の公平性・アダプテッド身体活動推進(PHEAPA)研究室のLuis Columna博士の指導を受けている。アダプテッド身体活動プログラムと知的障害のある人に関する介入について研究している。

Adam Pennell
米国、ペッパーダイン大学アダプテッド体育認定教員、運動行動実験室長、助教授。ペンネル博士は、障害のある人とない人の精神運動と健康関連に関する変数間の相互作用を研究し、さらに、姿勢制御変数には行為メカニズムとしての機能があり、それは視覚障害のある青少年と盲の青少年の運動・健康成果に影響すると仮定している。

Laura Prieto
米国、ウイスコンシン・マディスン大学博士課程院生。研究領域は、アダプテッド体育と障害のある人のダンスである。コミュニティ・センター、学校、ダンス・スタジオで障害のある子どもを指導し、運動を通して活動的なライフスタイルを創ることを目指している。現在、Luis Columna博士の指導の下、Fit Familiesプログラムで自閉症のある子どもとその家族に身体活動介入研究を計画・実施している。

Kyle Rector
米国、アイオワ大学コンピュータ科学助教授、人間・コンピュータの相互作用と利用可能性の専門家。盲人あるいはロービジョンの人の生活の質を高めるためのテクノロジーの開発と評価をしている。エクササイズと美術館学習活動(art exploration)も研究している。

Xihe Zhu
米国、オールド・ドミニオン大学ヒューマン・ムーブメント・サイエンス学科健康体育准教授。彼の中心的な研究は、学齢期児童生徒の介入・測定・縦断的変化の領域における健康関連フィットネスおよび身体活動参加である。Zhu博士はSHAPE America Mabel Lee賞とAIESEP Young Scholar賞の受賞者である。現在、Journal of Teaching in Physical Education と Questの編集委員を務めている。

監訳

中田 英雄
筑波大学名誉教授、博士(心身障害学)

訳者

升本 絢也 [1章]
広島文化学園大学人間健康学部准教授、博士(学術)

三木由美子 [2章]
広島修道大学人文学部准教授、博士(学術)

関 喜一 [3章、12章]
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 情報・人間工学領域人間情報インタラクション研究部門 行動情報デザイン研究グループ、上級主任研究員、博士(工学)

牟田口辰己 [4章]
元広島大学教授、博士(教育学)

韓 星民 [5章]
福岡教育大学教育学部准教授、博士(学術)

中村 貴志 [6章、13章]
福岡教育大学教育学部教授、博士(医学)

門脇 弘樹 [7章、14章]
山口学芸大学教育学部講師、博士(教育学)

河野 喬 [8章]
広島文化学園大学人間健康学部准教授、博士(芸術工学)

前田 慶明 [9章]
広島大学大学院医系科学研究科講師、博士(保健学)

山﨑 昌廣 [10章]
広島文化学園大学人間健康学部教授、博士(医学)

鄭 勳九 [11章]
広島大学大学院人間社会科学研究科研究員、博士(学術)

[翻訳章順]

書籍データ

【発行日】2023年1月
【版型】B5
【ページ数】202

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序文

本書は2021年にRoutledge社から出版されたJustin A. Haegele編著「Movement and Visual Impairment-Research across Disciplines-」の全訳である.
Justin A. Haegele博士は, 米国バージニア州のオールド・ドミニオン大学Human Movement Sciencesの准教授であり,2015年にオハイオ州立大学でアダプテッド体育の博士号を取得し,2017年にInternational Federation of Adapted Physical Activity (IFAPA)においてYoung Professional Awardを受賞した新進気鋭の研究者である.
本書は,視覚障がい者の身体運動に関する世界で初めての専門書である.視覚障がい者の身体運動に関する学際的な実証研究論文が精選され,考察され,問題点と課題,実践的な意義,および今後の研究の方向が20名から成る国際チームによって14章に整理されている.その範囲は,子どもから高齢の視覚障がい者の運動スキルの発達,O&M,姿勢制御,視覚障がいスポーツ,身体活動と体力,バイオメカニクス,テクノロジー等に及んでいる.とりわけ,盲ろう(Deafblindness)の人の身体運動に関する章の設定には慧眼を感じる.改善と向上を図る介入研究が取り上げられ,その意義と重要性が指摘されている.各章の引用文献は,各領域をより深く理解し,研究を始める上で役立つと思われる.本書は,視覚障がい者の身体運動に関する研究が到達している地点を世に知らしめた初めての専門書でもある.本書が学際的な研究エビデンスに基づいて構成されている点を考慮して,本書のタイトルを「視覚障がい者の身体運動科学―学際的研究―」とした.
ルネサンス期に耳は目にそのもっとも重要な情報収集器としての地位を譲り渡し,西欧では視覚が優位になり,西欧の人間は・・・視覚的世界に住んでいる(Schafer, 1977)といわれるが,本書では視覚優位主義に対する批判がいくつか見られる.この論議は興味深いので,該当の章を読んでいただきたい.大学生,大学院生のほかに,体育・スポーツ・健康,リハビリテーション,特別支援教育,障がい者スポーツ,工学・人間工学等の専門家,さらに視覚障害のある人にも本書を薦めたい.
かつて,視覚特別支援学校の小学部の子どもたちと盲人バレー(フロアバレーボール)の試合をして短時間で完敗したことがある(中田,1986).蹲踞の姿勢で遮眼した前衛の大学生は,互いに手をつないでブロックすることも,両手を左右に広げて足元にあるボールに触れることも,移動することも,状況を把握することもできず,ただうつむいているだけであった.子どもたちが独自の空間概念と運動スキルを獲得し,発達させていることをはからずも知ることになった.
東京2020パラリンピック競技大会のブラインドサッカーに参加した日本人選手が対スペイン戦でコーナーキックからの浮き球のクロスをダイレクトで合わせてゴールをもぎ取った.このプレーは非常に難しいが,空中に浮いたボールから微かに聞こえた「シャカシャカ」の音でボールの軌道をイメージし,しっかりとミートすることができたという.この卓越したプレーは,19年間にわたるトレーニングの成果であったと自負していた.ブラインドサッカーの魅力の一つに,日常生活にはない「自由に考え,自由に歩くことができる,自由」があるという(黒田,2021).
本書では,Visual impairmentとDisabilityをそれぞれ視覚障がい,障がいと表記することにした.Obstacleは障害(物)とした.
不明な点をJustin A. Haegele博士に問い合わせると,そのつど間髪を容れずに返事が返ってきた. 記して感謝したい.

2022.11.
翻訳者を代表して
監訳者 中田 英雄

引用文献

  • 黒田智成(2021):特別講演 ブラインドサッカーとその魅力~2020東京パラリンピック競技大会を通して感じたこと~,第47回感覚代行シンポジウム講演論文集,21-24
  • 中田英雄(1986):盲人バレー,人類働態学会会報,51,4-5
  • R. Murray Schafer (1977):Our Sonic Environment and the Soundscape the Tuning of the World, Destiny Books, 21-22, 鳥越けい子・小川博司・庄野泰子・田中直子・若尾裕訳(2022),新装版 世界の調律 サウンドスケープとはなにか,平凡社ライブラリー 926,平凡社,38-40
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