生涯スポーツ実践論<改訂4版> ~生涯スポーツを学ぶ人たちに~
生涯スポーツ実践論<改訂4版> ~生涯スポーツを学ぶ人たちに~
体育・スポーツ・健康科学テキストブックシリーズ
編著者
川西 正志 (鹿屋体育大学名誉教授・北翔大学生涯スポーツ学部 特任教授)
野川 春夫 (順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科 特任教授、武庫川女子大学 学術顧問,(公財)日本スポーツクラブ協会 理事長)
著者
青島 健太((有)オフィス・ブルー 取締役/スポーツライター)
秋吉 遼子(東海大学体育学部 特任助教)
伊藤 央二(和歌山大学観光学部 准教授)
大勝 志津穂(愛知東邦大学経営学部 准教授)
太田 あや子(武蔵丘短期大学 教授)
岡安 功(広島経済大学経済学部 准教授)
勝田 隆(国立スポーツ科学センター センター長)
金子 健((株)協栄 営業本部)
上 梓(日本作業療法士協会・順天堂大学スポーツ健康科学部 協力研究員)
菊池 秀夫(中京大学スポーツ科学部 教授)
北村 尚浩(鹿屋体育大学生涯スポーツ実践センター センター長/准教授)
工藤 保子(大東文化大学スポーツ・健康科学部 准教授)
工藤 康宏(順天堂大学スポーツ健康科学部 先任准教授)
國本 明(大阪産業大学スポーツ健康学部 准教授)
久保 和之(龍谷大学社会学部 准教授)
久保田 晃生(東海大学体育学部 教授)
坂口 俊哉(鹿屋体育大学体育学部 講師)
上代 圭子(東京国際大学人間社会学部 准教授)
新藤 一晴(順天堂大学スポーツ健康科学部 協力研究員)
髙﨑 尚樹((株)ルネサンス 取締役専務執行役員)
長ヶ原 誠(神戸大学大学院人間発達環境学研究科 教授)
津々木 晶子(文部科学省スポーツ庁)
冨山 浩三(大阪体育大学体育学部 教授)
中澤 公孝(東京大学大学院総合文化研究科 教授)
仲野 士(仙台大学体育学部 教授)
中本 浩揮(鹿屋体育大学体育学部 准教授)
中山 健(大阪体育大学体育学部 准教授)
二宮 浩彰(同志社大学スポーツ健康科学部 教授)
萩 裕美子(東海大学体育学研究科長 体育学部 教授)
原田 宗彦(早稲田大学スポーツ科学学術院 教授)
彦次 佳(和歌山大学教育学部 准教授)
平野 貴也(名桜大学人間健康学部 教授)
藤田 紀昭(日本福祉大学スポーツ科学部 教授)
舟木 泰世(文部科学省スポーツ庁)
舩越 達也(大阪国際大学人間科学部 准教授)
増山 尚美(北翔大学生涯スポーツ学部 教授)
松井 健(追手門学院大学社会学部 教授)
松岡 宏高(早稲田大学スポーツ科学学術院 教授)
松永 敬子(龍谷大学経営学部 教授)
松本 耕二(広島経済大学経済学部 教授)
松本 眞一((一社)生涯スポーツ社会創成研究所 理事)
松本 弘志((株)カワサキスポーツサービス 代表取締役)
山口 志郎(流通科学大学人間社会学部 准教授)
山口 泰雄(神戸大学 名誉教授)
來田 享子(中京大学スポーツ科学部 教授)
涌井 佐和子(順天堂大学スポーツ健康科学部 先任准教授)
渡辺 泰弘(広島経済大学経済学部 准教授)
〈五十音順〉
書籍データ
【発行日】 2018年4月
【判型】 B-5
【ページ数】 320
【図表】 図表多数
特長
急速な少子高齢化社会の変化と2020オリンピック・パラリンピック大会後を見据えたスポーツ政策に対応すべき国民各層への生涯スポーツの振興のための具体的な取組や提案が必要と考え第4版の改訂を進めた。よりアップデートなデータを提供しつつコンパクトでインパクトある内容構成を試み、この分野で先駆的な研究に取り組んでいる有能な研究者を新たに著者として依頼した。2020オリンピック・パラリンピック東京大会後のスポーツ界の変革と発展に対応すべき「生涯スポーツの理論と実践」に関する科学的根拠と具体的な取り組みを示した内容となっている。
生涯スポーツ実践論の改訂4版にむけて
わが国は今日急速な少子高齢化が進む中、経済や教育への対応も大きな課題であることは言うまでもない。高齢化に伴い現時点での約40兆円にも及ぶ医療費の今後の増大や社会保障を始め、少子化に伴って引き起こされる学校の縮小や教育制度の質的変換などさまざまな局面において改変を余儀なくされている。当然のことながら、これまで日本でのスポーツ振興に寄与してきた学校運動部の縮小や指導者をめぐる運営管理体制の整備などは、学校ばかりではなく地域でのスポーツ環境にも変化が現れている。
一方で、2020オリンピック・パラリンピック東京大会が2年後に迫り、日本のスポーツ界はその成功に向けて弛まない努力を続けている。そこには、国民各層のスポーツによる感動の実現はもとより、大会後のレガシー(遺産)にも大きな関心が寄せられている。1964年の東京大会では、大会後の高度経済・文化的発展を始め、国民スポーツの発展にも大きなレガシーを残した。このことは、経済発展に伴って国民各層のレジャー活動への興味関心が高まったことに呼応し、スポーツ活動の需要が拡大された結果と捉えることができる。しかしながら一方では、スポーツ現場での指導者の体罰や暴力問題が綿々と取り沙汰されるなど、まさにスポーツ界に求められるガバナンスやコンプアライアンスの強化も今後に残された大きな課題であることは言うまでもない。また、戦後から今日まで続いている学校や職場、地域でのスポーツ組織の関連性や煩雑性は、スポーツ庁の創設によって運営体制の改変も余儀なくされるであろう。いずれにせよ、2020オリンピック・パラリンピック東京大会のレガシーのひとつとして、健全で豊かなスポーツ文化の形成に向けた社会全体のスポーツ組織やスポーツ振興のシステムが確立されることを願うばかりである。
今回、編者が本書の第4版の改訂を進めるきっかけは、スポーツ庁の設立と今後の日本の急速な少子高齢社会と、2020東京大会後を見据えたスポーツ政策に対応すべく、国民各層への生涯スポーツの振興のための具体的な取組や提案が必要と考え始めたからである。
第3版の内容を見直し、より最新のデータを提供し、体育・スポーツ関連の学部生、大学院生、地域の行政、指導者などの幅広い人々の視点に立って、コンパクトでインパクトある内容構成を試みた。また、生涯スポーツの分野で先駆的な研究に取り組んでいる気鋭の研究者を執筆陣の一人として加わってもらった。完成した原稿をみて、著者等の生涯スポーツ振興に対する情熱とエネルギーを感じる内容の改訂の出来と思われる。
まさに、日本の2020オリンピック・パラリンピック東京大会後のスポーツ界の変革と発展に対応すべき「生涯スポーツの理論と実践」に関する科学的根拠と具体的な取り組みを示した内容を目指している。今日までの日本のスポーツ政策は、どのような成果や課題を抱えているのか等についても本書が新しいデータや回答を提示している。特に、各章のまとめとして、講義等で活用していただけるように重要と思われる課題集も各章の担当者に作成していただいた。本書を使って講義される方は各章の専門的キーワードとともに、おさらいテストとして活用していただければ幸いである。
読者のみなさんには、本書が更なる進化を遂げるよう、忌憚ないご意見をいただければ幸いである。
2018年3月
編集者
川西 正志
野川 春夫
はしがき
21世紀を迎え日本の少子高齢化社会が急速に進む中、国民の運動・スポーツによる健康づくりの必要性が叫ばれている。特に近年、子どものスポーツ環境の整備や、生活習慣病の予防などに重点が置かれ、地域での生涯スポーツ振興や健康づくりが地方自治体の行政担当者ばかりではなく、広く国民各層の関心事となっている。
地域のスポーツ振興は、1970年代後半から社会体育振興と言う形で進められてきた。そこでは、学校や職場、地域が別々の範疇で、参加者に対してプログラムや指導者のあり方を問う内容や、集団に対しての施策および振興計画が中心的課題であった。しかしながら、少子化と完全週5日制に伴い学校の運動部活動を取り巻く環境に大きな変化の兆しがみられ、種目によっては、単一校での活動が困難な状況も出てきている。同様に、スポーツ少年団活動についても団員の確保や指導者の確保も難しくなってきた。一方、バブル経済の崩壊とともに1990年代以降、企業クラブの廃部が相次ぎ、同時に企業内での体力づくりプログラムも、個人の取り組みに委ねられる形となってきた。
21世紀に入って、日本の運動・スポーツ環境は、施策対象が集団から個人へ、横断面的から生涯にわたる縦断的な視点へと新たな局面を迎えている。この新しい局面に対応すべく文部科学省は「スポーツ振興基本計画」を、厚生労働省は「健康日本21」を掲げて、日本各地でスポーツ環境と健康づくり環境の整備が急速に進みつつある。
筆者らが関係している鹿屋体育大学は20年前に創設され、その教育目標の一つが今でいう生涯スポーツ指導者の育成であった。この教育目標を達成すべく独自性の高い実習プログラムを開発してきた。また、地域社会における生涯スポーツプログラムや健康づくりに関した研究活動やや普及振興に邁進してきた。3年前には、日本生涯スポーツ学会も立ち上げ、本年で第4回大会を神戸で開催するまでになってきた。
今回、実践的な生涯スポーツの内容で、大学生から現場の指導者や行政の生涯スポーツ担当者にも理解しやすい入門書にした。したがって、体育スポーツ系や健康福祉系の大学生や専門学校生および地域のスポーツ指導者が平易に理解できる内容・表現を目標として、生涯スポーツに造詣の深い若手や中堅の研究者を中心に執筆を依頼した。編集を進める中で、生涯スポーツの領域の広がりと新たな進むべき方向性や研究課題が本書に示されたと自負している。各執筆者のご協力に深く感謝の意を表すとともに、本書が題名通り生涯スポーツ振興と発展に実践的に役立つことを祈念する次第である。
平成14年6月吉日
編集者
川西 正志
野川 春夫