高齢者の体力および生活活動の測定と評価
高齢者の体力および生活活動の測定と評価
(book0048)
監修
出村 慎一
筑波大学大学院体育科学研究科博士課程修了
金沢大学大学院自然科学研究科教授、教育学博士
健康体力学 専攻
編集
宮口 和義
金沢大学大学院自然科学研究科博士後期課程修了
石川県立大学生物資源環境学部教養教育センター教授、博士(学術)
健康科学・運動学・測定評価 専攻
佐藤 進
金沢大学大学院社会環境科学研究科博士後期課程修了
金沢工業大学基礎教育部修学基礎教育課程生涯スポーツ教育准教授、博士(学術)
健康科学・測定評価 専攻
佐藤 敏郎
金沢大学大学院自然科学研究科博士後期課程修了
新潟医療福祉大学准教授、博士(学術)
健康科学・測定評価 専攻
池本 幸雄
金沢大学大学院自然科学研究科博士課程
国立米子工業高等専門学校 教養教育科教授、博士(学術)
体力科学・体育科教育 専攻
執筆者
山次 俊介 福井大学医学部医学科准教授
山田 孝禎 福井大学教育地域科学部講師
野口 雄慶 福井工業大学産業ビジネス学科准教授
高橋 憲司 帝京平成大学地域医療学部柔道整復学科助教
辛 紹熙 岐阜大学大学院医学系研究科スポーツ医科学分野助教
長澤 吉則 京都薬科大学基礎科学系健康科学分野准教授
杉浦 宏季 福井工業大学工学部産業ビジネス学科講師
松浦 義昌 大阪府立大学地域連携研究機構准教授
石原 一成 福井県立大学学術教養センター准教授
横谷 智久 福井工業大学工学部産業ビジネス学科教授
出村 友寛 仁愛女子短期大学幼児教育学科講師
書籍データ
【発行日】 2015年2月
【判型】 B5
【ページ数】 200
【図表】 図100 表63
序文
2013年の厚生労働省の発表によると、日本人男性の平均寿命が初めて80歳を超えた。前年を0.27歳上回り、80.21歳となった。女性は前年より0.20歳上がって過去最高の86.61歳となり、2年連続の世界一だった。その背景には、医療技術の発展、栄養状態の改善、住環境の改善など生活環境の充実があり、これらは平均寿命の飛躍的な延長につながっているといえよう。このような社会にあって“サクセスフル・エイジング(健康的な老い)”は高齢者個人にとっても、また社会にとっても理想といえるが、高いQOL(Quality of Life)を維持しながら高齢期を過ごすには、自身の関心や目的、生きがいを実行・遂行・達成するために必要な身体機能や健康状態を有しているかが重要になってくる。
体力はその重要な資源の1つである。最近では、体力測定は他人と比べることだけではなく、個人内での加齢にともなう体力低下を抑制するために行なうものであるという認識が、高齢者の間にも定着しつつある。よって、特に高齢者の体力測定のニーズが地方自治体の間でも高まってきている。
体力測定が実施可能な高齢者に対して、いかなる測定を行うかは、実は簡単ではない。高齢者の場合、青年期のような“より強く、より高く、より速く”といった価値観ではなく、自立した日常生活を営むのに必要な身体能力が十分備わっているかが重視される。高齢期では、様々な身体機能が低下するが、その様態の個人差は拡大する。 また、身体諸機能のうちどれか1つが、自立生活を営むうえで障壁となるまで低下していると日常生活動作の成就は困難となる。したがって、体力要素一つひとつを全面的に 捉えることよりも、様々な体力要素が総合的に発揮される日常生活動作が成就できるか否かという観点で測定することの重要性が高くなる。しかし、高齢者の体力の測定と評価についてまとめた本は、これまでほとんど刊行されておらず、一般成人を対象にした測定評価のマニュアルを参考にするしかなかった。
本書「高齢者の体力および生活活動の測定と評価」は、高齢者の健康づくりにかかわっている健康スポーツ科学、体育科学、社会福祉学などを専攻する学生、医師や理学療法士、作業療法士、健康運動指導士、健康運動実践士などを対象として執筆したものである。執筆者は編著者を中心に若手新進気鋭の研究者によって構成されており、高齢者の体力および生活活動力、さらに精神的健康度の測定と評価に関して、これまでの理論や研究成果をもとに書かれている。本書の内容を大別すると、[Ⅰ] サクセスフル・エイジングと高齢者の体力評価との関わり、[Ⅱ]高齢者の身体機能の測定と評価、[Ⅲ]高齢者の生活活動力および転倒リスクの測定と評価、[Ⅳ]高齢者の精神的健康度の測定と評価、[Ⅴ]高齢者体力測定における諸注意と結果のフィードバックの5部から成っている。特にⅡ—Ⅳ部は現場ですぐに活用してもらえるようにマニュアル本を意識した構成となっている。必要な箇所から随時読み進めていただきたい。本書が高齢者の健康づくりのために少しでも貢献できればと願っている。
体力はその重要な資源の1つである。最近では、体力測定は他人と比べることだけではなく、個人内での加齢にともなう体力低下を抑制するために行なうものであるという認識が、高齢者の間にも定着しつつある。よって、特に高齢者の体力測定のニーズが地方自治体の間でも高まってきている。
体力測定が実施可能な高齢者に対して、いかなる測定を行うかは、実は簡単ではない。高齢者の場合、青年期のような“より強く、より高く、より速く”といった価値観ではなく、自立した日常生活を営むのに必要な身体能力が十分備わっているかが重視される。高齢期では、様々な身体機能が低下するが、その様態の個人差は拡大する。 また、身体諸機能のうちどれか1つが、自立生活を営むうえで障壁となるまで低下していると日常生活動作の成就は困難となる。したがって、体力要素一つひとつを全面的に 捉えることよりも、様々な体力要素が総合的に発揮される日常生活動作が成就できるか否かという観点で測定することの重要性が高くなる。しかし、高齢者の体力の測定と評価についてまとめた本は、これまでほとんど刊行されておらず、一般成人を対象にした測定評価のマニュアルを参考にするしかなかった。
本書「高齢者の体力および生活活動の測定と評価」は、高齢者の健康づくりにかかわっている健康スポーツ科学、体育科学、社会福祉学などを専攻する学生、医師や理学療法士、作業療法士、健康運動指導士、健康運動実践士などを対象として執筆したものである。執筆者は編著者を中心に若手新進気鋭の研究者によって構成されており、高齢者の体力および生活活動力、さらに精神的健康度の測定と評価に関して、これまでの理論や研究成果をもとに書かれている。本書の内容を大別すると、[Ⅰ] サクセスフル・エイジングと高齢者の体力評価との関わり、[Ⅱ]高齢者の身体機能の測定と評価、[Ⅲ]高齢者の生活活動力および転倒リスクの測定と評価、[Ⅳ]高齢者の精神的健康度の測定と評価、[Ⅴ]高齢者体力測定における諸注意と結果のフィードバックの5部から成っている。特にⅡ—Ⅳ部は現場ですぐに活用してもらえるようにマニュアル本を意識した構成となっている。必要な箇所から随時読み進めていただきたい。本書が高齢者の健康づくりのために少しでも貢献できればと願っている。
2015年1月
出村 慎一