エンドレス・ウェブ ―身体の動きをつくり出す筋膜の構造とつながり―

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エンドレス・ウェブ ―身体の動きをつくり出す筋膜の構造とつながり―

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原書名:The Endless Web ~Fascial Anatomy and Physical Reality~ ; R. Louis Schultz & Rosemary Feitis

鈴木 三央(ボバース記念病院リハビリテーション部部長 作業療法士)

書籍データ

【発行日】 2010年5月10日刊行
【判型】 B5
【ページ数】 160
【図表】 多数

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訳者序文

私たちセラピストは、日々の臨床を実践していると、実に様々な症例に出会います。症例は個人特有の課題を抱えており、その課題に合わせて評価・治療を進める必要があります。症例の表情や何気ない会話から課題を確認します。症例の臨床像がどのような経過であるのか、機能的な課題を遂行する際、体幹の腹部の筋群の弱さ(weakness)を、どこで代償的に筋肉を過剰収縮させて姿勢や運動を制御しているのかといった全身を評価しながら治療の手掛かりを見つけていきます。これはクリニカル・リーズングと呼ばれ、最初に考えた仮説が正しいのかどうかを検証する仮説検証作業になります。機能的な課題に対して、予測的に姿勢や運動がどのように調整しているか(フィードフォワード)、そして課題の遂行中の変化にたいしてどのように姿勢や運動を修正するか(フィードバック)といった身体の一部分だけではなく、全身から評価します。この姿勢・運動の制御は、感覚‐運動を制御する中枢神経系の状態を反映しており、筋・骨格系の評価にも中枢神経系が関わっています。

エンドレス・ウェブという書名は、全身がくもの巣のようにつながっていることを表現しています。身体の一部分が動くと、全身が反応しますが、そのような反応を調整するのが結合組織です。筋・骨格系の評価に際し、筋膜/結合組織の解釈を含めることで、症例の全体像に対しさらに詳しい情報を提供するものです。この本と出合いは、約3年ほど前です。当時私は、大槻利夫先生(諏訪赤十字病院、理学療法士)から、脳卒中や整形疾患、神経難病という様々な症例を通して、評価やハンドリングの臨床指導を受けていました。指導を繰り返し受けることで、全身の相互の関係が少しずつ理解できるようになりました。このようなハンドリングの指導を受けながら、今までの解剖学や運動学とは、違う全身の関連性について書かれている、わかりやすい本がないものかと探している時に、大槻先生から紹介を受けたのがこの本です。この本が出版されたのは、1996年でやや古い本のため、参考文献もほとんどなく今のEBMの時代には、似つかわしくないかもしれません。ただ、普段の治療で身体のある部分に運動障害や痛みがあるときは、その部分だけでなく全身の姿勢や運動を評価することは多々あり、全身はくもの巣のようにつながっている(エンドレス・ウェブ)ことは非常に納得できます。姿勢や運動制御に関わる身体の構造が、心理的側面からも説明されており、また母体内からの発達過程の影響についても書かれています。このような内容ですので、成人の分野だけでなく小児に従事している理学療法士、作業療法士、言語聴覚士やボディワークに取り組まれている方々には、一人一人違う個人の状態に対応した評価と治療の援助になればと思っております。

2010.3.
特定医療法人 大道会 ボバース記念病院
リハビリテーション部 部長
人間環境情報博士 作業療法士
鈴木 三央

推薦のことば

脳卒中や整形外科疾患の患者さんを治療させてもらう際、私達はアラインメントの評価をします。骨格の配列を意味する用語ですが、アラインメントが良好な配列をしていない原因として全身の筋緊張(姿勢緊張)の異常や筋の短縮、関節の拘縮それに患者さんの身体の使い方(運動のパターン)を問題にし、その修正を治療として行っていきます。その中で私達は、患者さんに問題の箇所を動かそうとしてもらっても、他の部位も一緒に動いてしまう、あるいは私達が患者さんの問題ある身体部位を動かしてもらおうとしても、いろんなところにその動きが過剰につながってしまう、という経験をもっているはずです。これをどのように考えていけば解決への糸口が見つかるのかな、と思っていたときこの本に巡り会いました。R. Louis Schultzが、小児の発達と筋膜の発達の関連、成人の姿勢、運動の分析、解釈に身体の隅々までネットワークされている筋膜と筋の連結をその構造から機能までIda P. Rolfのセオリィをベースに独自の考察を加え解説しています。ちょうどその頃、当院に研修にみえられていたボバース記念病院の作業療法士、鈴木三央氏にこの本を紹介しました。彼は1983年、作業療法士になられると同時にボバース記念病院に入職され、小児と成人の治療で活躍されています。2004年には久保田競先生に師事され博士号を取得、2009年にはボバース国際インストラクターになられ、国内外のリハビリテーション分野で今後を期待されている気鋭です。今回彼の努力によって「エンドレス・ウェブ」日本語訳本が出版される事になりました、リハビリテーション関係者をはじめ、ボディワーカーならびに多くの臨床家の治療に生かしていただきたく推薦します。

大槻利夫
諏訪赤十字病院 理学療法士
ボバース上級講習会講師

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