入門運動神経生理学-ヒトの運動の巧みさを探る-
入門運動神経生理学-ヒトの運動の巧みさを探る-
編著
大築 立志(東京大学大学院総合文化研究科 教授)
笠井 達哉(広島大学大学院国際協力研究科スポーツ・健康科学教育部門 教授)
書籍データ
【判型】 B-5
【ページ数】 396
【図表】 293
まえがき
ヒトが自分の意志で目的のある行為を行うと、その行為は上手・下手の評価が与えられる。上手な動き・下手な動きとはどのような特性を持った動きなのであろうか。上手になるためには何をどのように改善すればよいのだろうか。上手な人と強い人は同じなのだろうか。練習では強くても本番に弱いのは何故なのだろうか。また、不幸にして疾病や外傷によって正常な動きができなくなってしまった人が、不自由さを感じない社会生活を送れるようにするためには、どのような配慮が必要なのであろうか。老化によって身体の諸機能は低下するが、動きの上手・下手も同様に低下していくのだろうか。人間国宝の職人のように、高齢になっても上手であり続けるためには、どのようなことが必要なのであろうか。
本書は、このような疑問をもつ人のための入門的ガイドブックである。結論的にいえば、上手・下手を決めるのは脳を中心とした神経系の働きの結果である。筋力トレーニングにより筋肉の性能を高めても、それは野球の技術を高めることには直結しない。何故なら、野球に必要な能力は、筋力をトレーニングするだけでは獲得できないからである。
筋力の向上に伴ってそれを操る神経系の命令機能も向上させなければ、身体は暴走してしまう。筋と神経がうまく調和してはじめて、ヒトの動きはスムーズになり、容易に目的を達成する運動を行うことができるようになる。
このような観点から、本書の内容は次のように構成した。
(1)本書の内容を理解するための基礎としての一般的な脳・神経・筋のメカニズムの解説
(2)基本的な研究方法の解説
(3)現在までに明になっている随意運動制御のトピックに関する解説
(4)将来への展望
本書の対象読者は、ヒトの運動機能に関心を持つ多くの人たちである。すなわち、一般人を含め、スポーツ選手、コーチ、スポーツ科学、身体運動科学、リハビリテーション分野に興味をもつ学生や研究者、PT、OT、医師のガイドブックとして役立つことを願う次第である。
編者
矢部 京之助・大築 立志・笠井 達哉