乳酸サイエンス ―エネルギー代謝と運動生理学― 【目次】

1章 糖の代謝経路
 1.体内の糖はグルコースとグリコーゲン
 2.酵素反応が何段階も続いていって分解される
 3.鍵酵素がいくつかある
 4.PDHを経てミトコンドリアのTCA回路へ
 5.酸素があっても乳酸はできる
 6.グリコーゲン代謝
 7.グリコーゲンの合成
 8.グリコーゲンローディング
 9.グルコースの取り込み
 10.グルコース輸送担体移動の仕組み
 11.肝グリコーゲン
 12.筋グリコーゲン合成の方が肝グリコーゲンよりも優先される
 13.肝臓では糖を新たに作れる

2章 脂質とアミノ酸の代謝経路
 1.脂肪の役割
 2.まず脂肪分解
 3.脂肪酸は血液から筋へ
 4.ミトコンドリアへの取り込み
 5.ベータ酸化からTCA回路へ
 6.不飽和脂肪酸
 7.中鎖脂肪酸
 8.ベージュ化
 9.アミノ酸とは何か
 10.エネルギー源としての役割は小さい
 11.即効性あるタンパク源の可能性
 12.アミノ酸の中でもロイシンが調整役を果たす?
 13.グリコーゲン合成や血管拡張なども
 14.タンパク質は立体構造をとっている
 15.タンパク質の必要量は?
 16.ペプチド摂取の効果
 17.アミノ酸の過剰摂取に注意する

3章 糖と脂肪の利用
 1.水に溶ける溶けない
 2.グリコーゲンでも水が必要になる
 3.糖はタンパク質にくっつきやすい
 4.脂肪は1kg=7,000kcal
 5.呼吸交換比
 6.運動強度と呼吸交換比
 7.強度と糖と脂肪
 8.なぜ糖利用が高まり脂肪利用が低下するのか
 9.脂肪の輸送が低下する
 10.20分たたなくても脂肪は利用される
 11.糖を利用することは脂肪の減量に無駄ではない
 12.糖は適量を

4章 乳酸の産生
 1.乳酸は無酸素状態の反映?
 2.酸素がないからではなく、糖分解が進むから乳酸ができる
 3.果実やジュースの摂取で血中乳酸濃度が上がる
 4.ミトコンドリアより糖分解
 5.糖分解のキーポイント
 6.酸素供給のようにみえても実は糖分解
 7.ダッシュやスパートで糖分解が過剰に高まる
 8.糖分解の高進はすぐ起こるが長持ちしない
 9.すばやいイオンの移動には解糖系
 10.糖分解で考える

5章 乳酸の酸化
 1.エネルギー源としての乳酸、ピルビン酸
 2.乳酸脱水素酵素
 3.M型でも乳酸酸化にも働ける
 4.筋グリコーゲンの乳酸を介した配分
 5.動的回復
 6.細胞内乳酸シャトル
 7.NADHの運搬
 8.脳での乳酸シャトル

6章 血中乳酸濃度の決定要因
 1.多くの要因が関係する
 2.乳酸の産生
 3.糖分解は過剰に起こりやすい
 4.乳酸の酸化
 5.乳酸の拡散と取り込み
 6.血漿量
 7.採血部位
 8.機器や測定ミスによる値の変化
 9.血中乳酸濃度をどう解釈したらよいのか

7章 LT
 1. 糖の利用が高まることがLT
 2.LTは酸素が足りないから起きるのではない
 3.LTから糖分解と利用が高まる
 4.LTから身体の負担が高まる
 5.LTの判定
 6.OBLA
 7.歩行や自転車走行でのLT
 8.換気量の急激な上昇開始点
 9.LTとVTとは同じメカニズムによらない
 10.VTのメカニズムも簡単にはいえない
 11.換気量は回数ではない
 12.LTは身体の負担が高まる運動強度として重要
 13.LTは「快調だな」でもある

8章 乳酸輸送担体MCT
 1.乳酸の細胞膜通過
 2.MCT1
 3.運動以外の観点からのMCT1
 4.MCT2
 5.MCT4
 6.他のMCTや乳酸/H+共輸送
 7.MCTの局在

9章 サラブレッドにみる高強度運動の代謝とトレーニング効果
 1.中距離走のスーパーアスリート
 2.速筋線維が多く、糖が多く乳酸が多くできるが、酸化能力も高い
 3.MCT の発育による変化
 4.高強度トレーニングにならないとMCT4は増えない
 5.トレーニング休止の影響
 6.MCT は運動後6時間まで増え、24時間で元に戻る
 7.トレーニングにより脂質利用が増加する
 8.2分間の高強度運動と乳酸の代謝
 9.乳酸は最初の1分で多くできて、後半1分ではあまり増加しない
 10.95−100%VO2maxの酸素摂取量で120%VO2max相当の走りをなぜできるのか
 11.乳酸産生では後半に大きくは貢献できない
 12.最後の直線では絞り出すように酸素を消費して乳酸を使う
 13.競馬のペースではレース中盤で何が起きているか
 14.高強度トレーニングの重要性

10章 持久的トレーニングによるエネルギー代謝の変化
 1.血中乳酸濃度が低下する
 2.なぜ乳酸産生が減るのか
 3.速筋線維に遅筋線維の性質を持たせる
 4.最大酸素摂取量とLTの効果
 5.持久的トレーニングの三要素
 6.早い段階でのトレーニング効果
 7.中距離選手の持久的トレーニング
 8.球技の持久的トレーニング
 9.年齢に応じたトレーニング
 10.発育によるエネルギー代謝の変化
 11.加齢による機能低下は年1%程度だが、トレーニング効果もある
 12.温熱刺激

11章 運動時における疲労
 1.pH低下の過大評価
 2.乳酸だけでは疲労は説明はできない
 3.乳酸ができないから疲労している
 4.火事と消防車みたいなもの
 5.疲労を区別する
 6.リン酸
 7.カリウム、ナトリウム
 8.筋グリコーゲン
 9.その他の疲労をもたらす要因
 10.運動翌日の疲労
 11.交感神経の働き
 12.オーバートレーニング
 13.運動の快さ
 14.日常生活の疲労と運動の疲労とは違う
 15.糖を利用できることが疲労を軽減する
 16.乳酸測定は疲労の原因でなく結果として利用する

12章 無酸素運動はありえない
 1.無酸素運動がありえるのか
 2.運動後の酸素摂取量を酸素負債として酸素必要量を過大評価
 3.酸素負債という用語は誤り
 4.400m走中の酸素利用は需要量の半分以上
 5.高強度運動での酸素摂取量では筋での酸素消費量がわからない
 6.短距離走は酸素摂取によるエネルギーが一番大きい
 7.乳酸産生によるATPは多くない
 8.クレアチンリン酸も計算してみる
 9.クレアチンリン酸と「酸素の貯め」
 10.貯めの量
 11.400m走終盤では少なくとも3/4が酸素利用のエネルギー
 12.短距離走は速度が一定の割合で低下していく
 13.3つの系で考える限界
 14.スプリントトレーニングをどう考えるか
 15.苦しければよいとは限らない
 16.トップスピードを上げるのが第一

13章 新たな乳酸の姿
 1.使いやすいエネルギー源
 2.脳の重要エネルギー源で脳の機能にも関わる
 3.心筋でも好ましい
 4.毛細血管を増やすなど、組織合成を高める働きが乳酸にある
 5.脂質代謝を制御し食欲やがんにも関係する
 6.乳酸は適応促進因子でミトコンドリア合成を高める
 7.MCT1もPGC-1αで高まる
 8.乳酸を摂取させてミトコンドリア合成が高まるか
 9.乳酸を注射してみたら、PGC-1αmRNAが増えた
 10.逆に乳酸濃度を減らすとトレーニング効果が減る
 11.運動後に乳酸を投与してみたら
 12.乳酸は適応すべき状況を教えるインディケーター

14章 抗疲労サプリメント
 1.クエン酸が乳酸をなくして疲労回復?
 2.クエン酸でクエン酸回路は高まらない
 3.緩衝能力に効果の出る可能性はあるが実際には多量に摂れない
 4.運動時の疲労と日常での疲労の混同
 5.酢の効果も不明
 6.ビタミンB1と疲労
 7.ビタミンB1はピルビン酸脱水素酵素の働きに関係する
 8.運動したらよりビタミンB1が必要になるのか
 9.足りている時のビタミンB1摂取は血中乳酸濃度に影響しない
 10.ビタミンB1には別の働きがあるのでは
 11.ビタミンB1で疲労回復というのはやはり乳酸を悪者にしただけでは
 12.疲労回復というより運動前に摂るべきものでは
 13.タウリンで長時間運動後の自由運動量が落ちない
 14.タウリンが長時間運動後の筋グリコーゲン再合成を高める
 15.活性酸素も悪者と決め付けられない
 16.健康情報に冷静な判断を

15章 糖分解の視点を加えた新たな運動生理学の確立を
 1.酸素摂取量は重要だが、それだけではない
 2.本来定常状態を考えている
 3.肺での酸素摂取量以外はすべて無酸素的代謝となってしまう
 4.乳酸産生では多量のATP産生はできない
 5.糖分解は過剰に起きる、過剰に起こす
 6.過剰の糖分解を抑えるのがトレーニング効果の1つ
 7.高強度運動の高所トレーニングも糖分解抑制が重要因子では
 8.糖分解の大きさで誤解してしまった
 9.最大10秒パワー、30秒パワーで十分では
 10.酸素の貯めとクレアチンリン酸
 11.3つの系で考えるのも誤りの元ではないか
 12.糖の視点からの疲労
 13.糖と脂肪の代謝調節メカニズムは?
 14.糖の視点を持った新たな運動生理学が必要